クラウドSIMの障害発生理由と今後の展開についてチェック
※こちらのブログは通信業界歴20年の者が個人の見解で書いたものです※
クラウドSIMは、これからのグローバルな高度情報通信社会において、数々の問題を解決する手段にもなり得る重要な技術です。
この記事では、2020年春にクラウドSIMで発生した障害の原因について解説しています。
目次
クラウドSIMを使った無制限ルーター障害はなぜ起きた?
近年、業務の効率化や災害発生時に備えたテレワーク(遠隔勤務)が進められており、新型コロナウイルスの発生・流行に伴いさらにその動きは加速しています。
テレワークの推進と重なるようにして、「クラウドSIM」と呼ばれる新たなSIMを使ったモバイルwi-fiルーターが人気を集めています。
この「クラウドSIM」とは、通信事業者(キャリア)のSIMカードを仮想化したもので、仮想SIMカードを使って通信を行うもの。
近年ではクラウドSIMを使い「容量無制限」の通信を強みとする業者が増えてきていますが、ユーザー側にとっても大きな需要があります。
しかしクラウドSIMによる容量無制限通信は、あるタイミングで通信ができなくなったり、ルーターの再起動をかけても症状の改善がみられなかったりと、使用状況に個人差が大きいことが問題に。
今年2020年の春には、ユーザーから「速度が非常に遅い」といった申し出が各モバイルwi-fi事業者に寄せられ、運営側が調査をしたところ以下のような事実が判明しました。
・ データトラフィック量の増加によって一部のキャリアからSIMカードの提供が止まっている
・ 一部のキャリアにおいて、SIMの増強に遅延が生じている
・ 新型コロナウイルスの影響でSIMカードを動かす設備の製造・発送が停止した
・ 上記の理由から十分なデータ量の確保ができていない
・ 利用状況によって繋がるSIMカードが異なるため、低速通信のSIMに繋がる現象が発生
使い放題wi-fiの障害はクラウドSIMが直接原因ではない
4月に起きた速度遅延の問題は、データトラフィック量の増加とコロナウイルスの影響が重なったことによるものが原因でした。
そのため、クラウドSIMを動かす技術やプラットフォームそのもののトラブルではなく、SIMの不良でもありません。
クラウドSIMそのものに原因があると思われがちですが、クラウドシステムを通してSIMを提供するサービスそのものは正常に稼働しており、SIMそれぞれの通信状況が安定していれば問題なく使い続けることができます。
2020年4月、ユーザーからの指摘を受け、クラウドSIMの提供事業者は代理店との条件を変更し、1日あたりのデータ通信量を限定的なものに変更しました。
障害が起きたとき、クラウドSIMの提供事業者はユーザーがどのSIMカードを使って接続しているかが把握できず、回線の提供元である企業に情報提供を要請。
一方で、通信状況の復旧に向けて希望者には回線の休止措置や速度遅延が起きた時期の基本料金の返金、無制限プランの終了と代替プランへの移行などを進めています。
再発防止策や改善策を知る
現在、クラウドSIM事業者は以前のようなトラフィックの増加などに伴う速度遅延を防ぐために、いくつかの再発防止策や改善策を取っています。
トラフィックが集中したSIMは速度制限にかかるため、ユーザー側で低速化になってしまいます。そこで、あらかじめ無制限プランでは
なく利用量に制限を設けることで、ユーザーの過剰な利用を制御する方法がとられることになりました。
次に、無制限プランではなく容量を限定することで、ユーザーにもある程度の制御を求める方策がとられました。
これは、クラウドSIM事業者が物理SIM調達を繰り返さなければならないコストと手間を省き、同時に「無制限」という言葉によって契約者が爆発的に増えることを避ける意味合いもあります。
実質の無制限ではなくなりますが、ユーザー側も限られた容量の中で工夫するようになるため、無制限プランの維持にかかるコストの問題がクリアできました。
ユーザーが安心してSIMを使えるように、利用中のSIMカードのキャリアが確認できるサービスも登場。専用のサービスに接続すると、接続中のキャリアの名称がチェックできます。
格安で大容量の通信が可能なクラウドSIM
クラウドSIMは物理SIMを管理する手間がかからず、大手キャリアのSIMを使うことができるサービス。月額料金わずか2,000円台~3,000円台の価格帯で、20GB以上の大容量データ通信が可能となるため、大手キャリアに加入しなくても格安でスマートフォンを持つことができます。
2月から4月にかけて起きた速度遅延を受け、事業者とユーザーのそれぞれがスムーズにサービスを提供・利用できるように改善策が打ち出されており、現在は内容を変更してサービスが提供されています。
システムそのものに問題はなく、あくまでも複数の現象が重なったための結果ということで、安心して利用を継続することができます。
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筆者:平島 賢一(男性) 通信業界歴20年